自然の生物が、がん治療の「革命」になるかも
1月 15, 2008
自然界に存在する生物のメカニズムを応用することで、人間の体内を自由に移動でき、がんを除去したり、薬剤を病巣へ運んで治癒につなげていく「ナノマシン」の開発が、国内で本格的に進められることが12月13日、東京都内で発表された。この新しい治療法の開発は、世界でも初めてとなる先進的な取り組みといい、将来の実用化に向けて医療関係者らの注目を集めそうだ。(山田利和・金子俊介)
この新技術の開発に取り組むのは、独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)の中央研究所(茅幸二所長)と国立大学法人北海道大学の電子科学研究所(笹木敬司所長)。同日、理研の東京連絡事務所で両者が連携して研究・開発を進める協定を締結した。協定の有効期間は5年間で、理研中央研究所(埼玉県和光市)に北大電子研連携研究室を開設し、自然界に存在する粘菌(生物)のメカニズムを解明するとともに、その原理を応用したナノマシンの製作などを展開していく。
共同研究の柱の一つとなるのが、がんの除去や薬剤を病巣へ送達するなどの新規治療法の開発。
自然界には、エサを認識して、その方向へ自発的に動いていくことに加えて、その際に、障害物を避けて最短のコースでエサをとらえることができる「粘菌」が存在する。理研と北大のチームは、このような粘菌のメカニズムに注目。なぜ、粘菌がえさを認識してから、その方向へ最適で最短なコースで動いていけるのか、粘菌のセンシングの原理についての解明を進める。
また、粘菌は、人間の体内で筋肉を動かすたんぱく質のアクチンとミオシンを持っており、粘菌がこれらをどのように動かしているかについても解析。
これらの研究に取り組むことで、粘菌のアクチンとミオシンから安定した出力を取り出せるナノマシンを作製する。これが実現すれば、粘菌が無駄な動きを取ることがなく、エサだけを効率的にとらえられるように、人間の体内(血管)を自由に移動して、がんの病巣だけを取り除いたり、薬を患部以外に散らせることなく投与したい病巣へピンポイントで注入して治療に役立てられる新しい治療法が開発できるという。
研究チームは「粘菌の賢さを解明して、その機能をナノマシンにうまく転用させたい。そして、病巣等に能動的に進んでいき、患部を切除したり、薬を必要な部分だけに投与できる新しい医療に役立つ技術などを開発したい。実用化につなげられれば、患者さんにより優しい医療を提供することにもなるだけに、これからの研究・開発成果を社会にフィードバックしていきたい」と意欲を燃やしている。